マッサージスクールとマリア
2007年1月25日マリアの事を書こう。
マリアとはマッサージスクールで出会った。大体40歳くらいで太った白人のオバサンとだけ思っていたが、実はマリアは私と同じ外国人でルーマニア出身だった。
始めの頃は特にマリアと話す事も無かったが、次第に私達二人はクラスで孤立するようになった。外国人だったから。悲しい事実。これをテレビ番組の「サバイバー」になぞってみたりしてマリアに言ったら笑っていたっけ。
それからはマリアと隣同士に座る事になった。
マリアには夫と一人息子がいて、その息子はコロンビア大学(アイビーリーグ)の学生で「すごいですね」と言ったらとても誇らしげだった。当然だよね。
ある時、私のテストの結果が良くなかった。それを見てマリアが「レイコは勉強の仕方を知らないのね。教科書の後ろの問題集から勉強しな」と教えてくれた。私はまずは教科書を読んで理解してから問題集に取り掛かろうとしていたけど、何十頁の教科書を理解するだけで体力を消耗し、問題集までは追いつていなかった。
マリアはルーマニアで大学を卒業していた。私が「ルーマニアって共産主義だったから大学代タダだったんでしょ?」と言ったら、「ルーマニアが共産主義国だって知っているんだ」とまず感心していた。「チャウシェスクが処刑されたし」って言ったら「そうそう」って。これも私が外国人だから分るんだけど、一般のアメリカ人は余り外国に興味が無くて他の国のことを知らない。
そしてマリアが「大学代はタダだけど誰でも入れる訳じゃなくて入学試験がすごく難しいのよ」と強調した。例えるなら日本の大学が国立大しかなくて狭き門なんだろうなと思った。
私が「エリートだったんだ」と言ったら、笑顔で「大学を卒業後は会社のOX部門でずーっと働いていた」と教えてくれた。専門職だったらしい。
マリアの夫も別のエリート企業に勤めていて、90年代に会社の研修で行った先のアメリカで逃亡した。その後、夫が帰国しないのでマリアは会社をクビにさせられた。
私が「違う会社だったんでしょ?アンフェアーだよ!」と興奮気味に言ったらマリアが「それが共産主義なの!」と言った。
その当時は丁度チャウシェスク政権が崩壊、処刑された後だったが、まだ共産主義の名残があったそうで、連帯責任を取らされたらしい。そして十年間も夫と別々に暮らしてやっと息子と二人でアメリカに来たそうだ。
マリアは車の運転も出来ないほどの頭痛に悩まされていた。私が辞書で「更年期?」と聞いたら「なんで分るの?あなたも?」と聞かれて驚いた。「違います」と答えたが同世代に思ってる?
勉強したくても体が付いていけなくて勉強が出来ないこともあるから、私は今の若い内にこそ勉強して頑張ろうと思った。
マリアはいい人だったけど、たまにムカつくこともあった。「アジア人はどうしてこんな目をしているの?」と私の目の前で吊り目をした。喧嘩売ってんの?と思うけど、無邪気なだけ。こうゆう人種のタブーとか知らないみたい。
マリアはルーマニアで顔のエステシャンをしていてアメリカでもエステをしたいけど、アメリカはエステより体のマッサージの方が需要が高く人気でその事でムカついていた。
私が「フランスでもエステが人気って聞いたことある。ルーマニアはヨーロッパ側だからエステが人気なんでしょ?」って言ったら、「そうなのよ」と嬉しそうだった。フランスとかヨーロッパと同じに見られるのがいいみたい。
アメリカで顔のエステをするにはマッサージの資格が要る。
マリアはルーマニアで使っていたエステのパックのシートを気前良くアメリカ人生徒にあげていた。肝心の仲良しの私には一枚もくれなかった。アメリカ人にいい顔したいんだーと察した。健気だけどちゃっかりしているなって思った。
そしてテストの度にマリアの更年期の症状が悪くなりマリアはやつれ、私も同じくテスト勉強が辛くて欝を再発してやつれていた。毎日、朝から学校が始まる夕方まで勉強して集中力が落ちるとチョコレートで燃料補充してぶくぶくと太っていった。
ある日、テスト勉強でやつれた私を見てマリアが「私はあなたがクラスで一番沢山勉強をしているのを知っている。だからテストで間違えても正解にしてあげるから!」と言ってくれた。
テストの回答は隣同士で交換して採点する。私達はテストでも隣同士だった。
その言葉の裏には私もマリアがクラスで一番勉強しているのを知っている・・・ってことは、マリアのテストも正解にするってこと。取り引きってこと?
えーーなんか分んないけど、そうゆう事したくない。だから、返事はしないでとにかくお互い悪の手に染まらないように勉強を一生懸命した。
実習の時は二人一組になってマッサージを交互にし合うのだけど、アメリカ人はおしゃべりしながら実習するから上手くお喋りできない私達はいつも取り残されていた。
別にイジメとかじゃないけど、何となく分る。きっとこの人達は子供の頃から学校でも白人は白人同士で黒人は黒人同士で固まって育ってきたから仲間はずれとか思っていないんだろう。
そんなこんなでマッサージの組であぶれるとすごく精神的にダメージが大きかった。勉強は一生懸命して、クラスではつまはじきにされた感じになるし、なんかいい大人になってこんな気持ちになるのってすごく耐え難い屈辱感。だからアメリカ人は敵を作るんだよ!って思ったりもした。
先生にマッサージの組をきちんと管理してもらえるようにお願いしても幼稚園じゃないし大人同士だからしっかり見てもらえなかった。
そしてなんだかんだで限界と思って辞めた。
後から授業料の未払い分の請求が来たけど、夫が学校の契約書をよく読んで法的に請求される部分が無いと分ってレターを書いたら、それ以後は追及されなかった。契約書を振りかざせばこっちが払うと思って今までそうゆうビジネスをしてきたんだろう。
その後のマリアは知らない。
通学途中に交通事故に遭ったり、更年期で大変とかあったけど、以前に銀行でローンを組んで授業料を払ったから絶対に卒業するって言っていたから多分卒業したと思う。
私にはそのハングリー精神も無かった。
マリアとはマッサージスクールで出会った。大体40歳くらいで太った白人のオバサンとだけ思っていたが、実はマリアは私と同じ外国人でルーマニア出身だった。
始めの頃は特にマリアと話す事も無かったが、次第に私達二人はクラスで孤立するようになった。外国人だったから。悲しい事実。これをテレビ番組の「サバイバー」になぞってみたりしてマリアに言ったら笑っていたっけ。
それからはマリアと隣同士に座る事になった。
マリアには夫と一人息子がいて、その息子はコロンビア大学(アイビーリーグ)の学生で「すごいですね」と言ったらとても誇らしげだった。当然だよね。
ある時、私のテストの結果が良くなかった。それを見てマリアが「レイコは勉強の仕方を知らないのね。教科書の後ろの問題集から勉強しな」と教えてくれた。私はまずは教科書を読んで理解してから問題集に取り掛かろうとしていたけど、何十頁の教科書を理解するだけで体力を消耗し、問題集までは追いつていなかった。
マリアはルーマニアで大学を卒業していた。私が「ルーマニアって共産主義だったから大学代タダだったんでしょ?」と言ったら、「ルーマニアが共産主義国だって知っているんだ」とまず感心していた。「チャウシェスクが処刑されたし」って言ったら「そうそう」って。これも私が外国人だから分るんだけど、一般のアメリカ人は余り外国に興味が無くて他の国のことを知らない。
そしてマリアが「大学代はタダだけど誰でも入れる訳じゃなくて入学試験がすごく難しいのよ」と強調した。例えるなら日本の大学が国立大しかなくて狭き門なんだろうなと思った。
私が「エリートだったんだ」と言ったら、笑顔で「大学を卒業後は会社のOX部門でずーっと働いていた」と教えてくれた。専門職だったらしい。
マリアの夫も別のエリート企業に勤めていて、90年代に会社の研修で行った先のアメリカで逃亡した。その後、夫が帰国しないのでマリアは会社をクビにさせられた。
私が「違う会社だったんでしょ?アンフェアーだよ!」と興奮気味に言ったらマリアが「それが共産主義なの!」と言った。
その当時は丁度チャウシェスク政権が崩壊、処刑された後だったが、まだ共産主義の名残があったそうで、連帯責任を取らされたらしい。そして十年間も夫と別々に暮らしてやっと息子と二人でアメリカに来たそうだ。
マリアは車の運転も出来ないほどの頭痛に悩まされていた。私が辞書で「更年期?」と聞いたら「なんで分るの?あなたも?」と聞かれて驚いた。「違います」と答えたが同世代に思ってる?
勉強したくても体が付いていけなくて勉強が出来ないこともあるから、私は今の若い内にこそ勉強して頑張ろうと思った。
マリアはいい人だったけど、たまにムカつくこともあった。「アジア人はどうしてこんな目をしているの?」と私の目の前で吊り目をした。喧嘩売ってんの?と思うけど、無邪気なだけ。こうゆう人種のタブーとか知らないみたい。
マリアはルーマニアで顔のエステシャンをしていてアメリカでもエステをしたいけど、アメリカはエステより体のマッサージの方が需要が高く人気でその事でムカついていた。
私が「フランスでもエステが人気って聞いたことある。ルーマニアはヨーロッパ側だからエステが人気なんでしょ?」って言ったら、「そうなのよ」と嬉しそうだった。フランスとかヨーロッパと同じに見られるのがいいみたい。
アメリカで顔のエステをするにはマッサージの資格が要る。
マリアはルーマニアで使っていたエステのパックのシートを気前良くアメリカ人生徒にあげていた。肝心の仲良しの私には一枚もくれなかった。アメリカ人にいい顔したいんだーと察した。健気だけどちゃっかりしているなって思った。
そしてテストの度にマリアの更年期の症状が悪くなりマリアはやつれ、私も同じくテスト勉強が辛くて欝を再発してやつれていた。毎日、朝から学校が始まる夕方まで勉強して集中力が落ちるとチョコレートで燃料補充してぶくぶくと太っていった。
ある日、テスト勉強でやつれた私を見てマリアが「私はあなたがクラスで一番沢山勉強をしているのを知っている。だからテストで間違えても正解にしてあげるから!」と言ってくれた。
テストの回答は隣同士で交換して採点する。私達はテストでも隣同士だった。
その言葉の裏には私もマリアがクラスで一番勉強しているのを知っている・・・ってことは、マリアのテストも正解にするってこと。取り引きってこと?
えーーなんか分んないけど、そうゆう事したくない。だから、返事はしないでとにかくお互い悪の手に染まらないように勉強を一生懸命した。
実習の時は二人一組になってマッサージを交互にし合うのだけど、アメリカ人はおしゃべりしながら実習するから上手くお喋りできない私達はいつも取り残されていた。
別にイジメとかじゃないけど、何となく分る。きっとこの人達は子供の頃から学校でも白人は白人同士で黒人は黒人同士で固まって育ってきたから仲間はずれとか思っていないんだろう。
そんなこんなでマッサージの組であぶれるとすごく精神的にダメージが大きかった。勉強は一生懸命して、クラスではつまはじきにされた感じになるし、なんかいい大人になってこんな気持ちになるのってすごく耐え難い屈辱感。だからアメリカ人は敵を作るんだよ!って思ったりもした。
先生にマッサージの組をきちんと管理してもらえるようにお願いしても幼稚園じゃないし大人同士だからしっかり見てもらえなかった。
そしてなんだかんだで限界と思って辞めた。
後から授業料の未払い分の請求が来たけど、夫が学校の契約書をよく読んで法的に請求される部分が無いと分ってレターを書いたら、それ以後は追及されなかった。契約書を振りかざせばこっちが払うと思って今までそうゆうビジネスをしてきたんだろう。
その後のマリアは知らない。
通学途中に交通事故に遭ったり、更年期で大変とかあったけど、以前に銀行でローンを組んで授業料を払ったから絶対に卒業するって言っていたから多分卒業したと思う。
私にはそのハングリー精神も無かった。
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