Fantasy

2007年10月18日 読書 コメント (2)
二十代のころ恵比寿で三島由紀夫写真展に行った時に買った本。正確には買ってくれた本。その時、知り合いのちょっと渋めのおじ様と一緒に行った。おじ様は名の知れた企業に勤めていて、紳士で知的でオシャレな人だった。

私が「喉が渇いたからジュースでも飲もう!」と目の前のファーストフードに飛び込み夜の銀座を二人でドリンク片手に飲み歩きした。手を繋いで。ちょっと若さを押し付けるように。さっきまで銀座のクラブで飲んでいたのに。おじ様は意外とこの状況を喜んでいたっけ。

ある日、おじ様が私の勤め先に電話をかけてきた。どうしたのかな?と思ったら「今、どこからかけていると思う?」と聞いてきた。私は興味なさ気に「どこですか?」と質問を質問で返した。

おじ様は「今、香港からかけているんですよ」とお茶目に言った。でも電話だから特に香港だろうが大阪だろうが臨場感もなく「だから何?」って感じだった。もし私の会社ロビーから電話をかけていたらある意味すごく驚いたけど。

今思うとおじ様は私にファンタジーを求めていたのかもしれない。私の若さとつれない素振りも全てひっくるめて。生憎私はそれに応えてあげることは出来なかったけど、おじ様はおじ様で適当に遊んでいたと思う。

今、私もファンタジーを求めている。

ファンタジーを求め街の中を彷徨い歩き疲れ果てた先にドラマが待っていた・・・なんて事はなく、今の気持ちはこれしかないと本箱からこの本を抜いただけ。

生活の中にドラマが無いから本の中に逃げるって寂しい気もするが、本は安全で楽しい一番身近なドラマな世界だ。

ちょっと思い出したのが中学の国語の先生が卒業のサイン帳に書いてくれた言葉。

「人生は短し、読む本は多し」

その先生は特別に大好きだった方では無いが、この言葉だけが長い時を経て浮かんだ。人の心に残る言葉を贈る事ができて教師冥利につきますね、先生。余計なお世話か。

私の知らないドラマはまだまだ沢山ある。退屈をドラマで埋めるのも悪くない。

この「肉体の学校」は三島由紀夫の本の中でも好きな一冊。三島好きの人から見たら邪道なのかも知れない。カッコイイ女の大人の恋愛小説。

最初に読んだ二十代より三十代で読んだ今の方がもっと面白かった。言葉が心に響いた。

コメント

nophoto
2007年10月19日21:30

 こんばんわ、唯さん。

 三島由紀夫、本人の人物像には興味しんしんで、いくつかの評伝や自宅の写真集などをおもしろく読みました。でも肝心の作品には今もほとんど手付かずで、両方を読んでこそとわかっているのに、ずいぶんと片手落ちなのが恥ずかしいです。
 ご紹介くださった作品、おもしろそうですね。探して読んでみます。

>「人生は短し、読む本は多し」

 まさにその通りだと思います。本が大好きで、国語の先生になられたんでしょうね。

唯
唯レイコ
2007年10月20日9:22

★るさん、こんばんは
私が行った写真展は、るさんが見た自宅の写真集と同じかな?と思います。洋館の豪邸で庭にギリシャ像などあるんですよね。パーティーの写真もあって、そのおじ様がゲストの有名人を解説してくれましたっけ。ブログに紹介した本は大人の女性にお勧めです。

>>本が大好きで、国語の先生になられたんでしょうね

先生は女性の方でした。先生のことをそんな風に考えたこともなかったで、ズッキンと胸に来ました。この一言で先生が文学少女だったことを語っていますね。
唯

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